世話人を中心に、住民の意見をまとめていきます。
一般的には、日照権、圧迫感、工事道路の危険性、(建設予定地が森林や史跡の場合は)環境保護や文化財保護、(建設予定地が工場などの場合は)環境汚染などでしょうか。
工事の振動や騒音被害のこともあります。
また、建築工事に先立つ解体工事での、振動、騒音、粉塵などの被害のこともあります。
(解体工事が、昭和50年代以前のものである場合、建物にアスベストやPCBが使われている可能性大です。もしその場合は、業者は所定官庁に届け出を行い、アスベストの場合は、粉塵が飛び散らないように解体作業をしなくてはなりません。もし、そうでない場合は、告発の対象になります)
たいてい、一番問題になるのは、日照権の問題です。
日照が奪われてしまうのに、被害地域が日影規制のないところで、そのため、日照時間が限りなく少なくなるにもかかわらず、法律的には、事実上、どうすることもできないケースがとくに多いです。
もちろん、民事裁判では、「受忍限度を越える」として、建築差し止めになったり、また損害賠償が認められたりしたなどはありますが、同じような条件でも、勝てたケース負けたケースがあり、勝てるかどうかは、裁判官の裁量による部分が大きいところがあります。環境権も、まだ日本では認められていません。
(2002年12月18日、国立市で景観利益を初認定し、すでに居住者もいる高層マンションの20m超部分の撤去を命じるという画期的な判決が出ました!
住民にとっては、心強い判例です。しかし、どこの地域でも当てはまるわけではありませんし、この判決が出るまで、住民側も二度敗訴の苦渋を飲まされています。
さらに、2006年、最高裁では、住民の景観利益を認めたものの、住民側の申し立ては却下となり、敗訴となりました。
一方、2003年10月には、風害による土地家屋の価値下落を認め、賠償を支払うという判決も出ています。)
すなわち、裁判に持ち込んだ場合、裁判官の判断基準がまだ判例として確定しているとはいえないのと、弁護士さんの適性などの問題もあるため、景観や日照権だけを正面に立てて裁判に持ち込むのは、現状では、一般的には難しいということです。
なによりも、日照の問題は切実ですが、直接被害を受ける地域住民以外にとっては、しょせん他人事であり、第三者の興味を引きにくいという最大の問題があります。
「そこまで日照にこだわるなら、低層住宅地域か、田舎に住めばいいじゃないか」
そういう暴論を持つ人が世間には少なくないという事実を、冷静に受け止めなくてはなりません。
だいいち、あなた自身、この問題に直面するまでは、よそのマンション問題には無関心だったはずです。
ではどうするか。
第三者の目を常に意識すること。
具体的には、日照の問題だけで攻めないようにすることです。
また、日照の問題を訴える場合にも、ただの住民エゴに見えないよう、「受忍限度を超えている」ということをきっちりと訴えることが大事です。「日照ゼロになる」「高齢者や病人の住む家に、ほとんど日が当たらなくなる」などという具体的な問題を明らかにすること。(難病患者の方、障害者の方がそういうお宅におられる場合は、あえて、そのことを表に出しましょう。裁判でも、役所との交渉でも有利になります)
また、工事となると、大量の工事車両が近隣の道路を通ります。
したがって、その道路や付近の交差点は、極めて危険な状態となります。通学路などになっていれば、大問題です。これは地域住民だけではなく、地区の小学校の父兄に呼びかけることができます。
建築予定地が、工場跡地である場合、そこには不法投棄物が埋まっていたり、土地が汚染されている可能性があります。農地の場合も、同様に、残留農薬の濃度が基準値を越えている可能性があります。
近隣に遺跡などがあるような土地柄ならば、その予定地にも、文化財が埋まっている可能性があります。
こういった問題点を、数え上げ、列記していくのです。
マンション問題を扱う、いろいろなホ−ムページを回って、自分たちのケースに当てはまりそうなものを、片っ端からピックアップする手もあります。
見つけた問題点は、きっちり箇条書きにして整理しておきます。
これらの問題点は、多ければ多いほど、住民側は有利だと思ってください。
次に、これらの問題点を、具体的に、業者や行政に対して、提示します。
工事騒音などの被害がすでに出ている場合は、それを詳細に記録します。粉塵などは写真におさめ、サンプルをとりましょう。
工事車両が事故などを起こしたら、かならず、写真で記録に残します。(ビデオを撮っておけばと思われるかもしれませんが、しかるべき編集ソフトなどがないと、ビデオは写真にすることができません。だいたいの場合長時間撮られたビデオのコピーを第三者に見てもらうというのは、事実上不可能に近いし、編集するとなるとそれなりの手間もかかりますから、結果的に、あまり使い道がないことが多いのです。ただし、大きな事故などが起こった場合は、ビデオがあるとTV局に売り込めます)
電柱にこすって傷を残したというような場合も、必ず写真に撮ります。
とにかく、役所に陳情に行く場合でも、こういった客観的資料がたくさんあると、業者のやり方が悪質であるという証拠になり、業者も言い逃れができません。
騒音や振動で体調の悪くなった人が出たら、医師の診断書も忘れずに。
危険な道路も写真に撮っておきましょう。
たとえば、工事用道路が非常に幅が狭いことを問題にしている場合、道路だけを撮っても、インパクトはありません。その細い道路を、(可能なら、大型の)車両が通行しているところを撮れば、道路の狭さがヴィヴィッドに、見る人に伝わります。
そこを子供が横断しようとしている、ああ危ない、という写真が撮れたら、完璧ですね。その道が通学路なら、通学時間帯に張り込みましょう。
業者が、先手を打って、学校と話をつけ、通学路を変更した場合も、あきらめることはありません。そもそも、一企業の営利事業のために、公立の学校が便宜をはかること自体、おかしなことなのです。また、通学路が変更になったとしても、それは集団登校の順路が変更になったというだけで、子供達は下校時、あるいは塾や友達の家に遊びに行くときに、問題の道路を通らないとはいえません。そのことを学校やPTAに対して、アピールすればよいのです。
建設現場や工場跡地に不審なもの(遺跡の痕跡、不法投棄らしき産業廃棄物等)を見つけた場合も、かならず写真を撮ります。
悪徳業者は、とにかく、言い逃れのできない証拠を突きつけられない限り、ぜったいに非は認めないと思ってください。(すぐに素直に認めてくれるような良心的な業者なら、そもそも紛争にならないはずです)。明らかな不法投棄の目撃住民が何十人もいたにもかかわらず、断固として否定し続けた、というケースもあるのです。そういう業者相手に、そのような事実があるのないのという押し問答を延々と繰り返したところで、下手をすれば、住民が難癖をつけて話し合いにならないから、と強行着工の口実を与えることにもなりかねません。
けれど、住民側に写真一枚撮っておく知恵があれば、そのような業者の主張など、一瞬で崩すことができるのです。
とにかく大事なのは、具体的な証拠を積み上げることです。
そして、業者の説明や情報開示を求めます。 口頭で行うより、(どうしても感情的になってしまったり、話を逸らされたりしやすい)、要望書という形で、業者に要望をおこない、書面で回答を求めると、効果的です。 それをもとにして、説明会にのぞむのです。 説明に矛盾点があったり、情報開示の拒否があれば、ここで徹底的に追求します。