業者の方へ

これはおとぎばなしのような実話です。
ある地区で、隣接する町内にふたつのマンション建設計画がありました。

一方の業者A社は、説明会を積極的に開き、住民とよく話し合い、住民の要求をできるだけ取り入れると明言し、実際、住民の方が「ほんとにいいの」と、驚くほど、誠意をもって設計変更を検討したり、素人の住民が説明会で質問したり要求した内容を取り入れた誠意のある協定書を、業者の方から作ってきました。補償金も、はじめから、ある程度納得できると思われる金額が提示されました。結果として、住民の会は、詳細について協議するぐらいで、業者とは敵対しようもなく、工事もスムーズに進みました。

もう一方のB社は、まったく逆に、住民から何度も要求されるまで説明会を開催せず、下請け業者の人たちですら「乱暴だと思う」と口にするような強引な工事で、住民に粉塵や騒音、振動などの多大な被害を出し、しかも、その被害の訴えにも耳を貸さない状況が続きました。いうまでもなく、説明会でも、一方的に業者の都合を主張するだけで、日影被害などの訴えにも、「日影規制がない地域だから」と事実上、無視する構え。

ついに、たまりかねた住民が結束し、徹底的な住民の抗戦が始まりました。

結果として、建設用地の土壌汚染などが住民の手によって調査〜暴露され、それを題目にした住民の直接行動で、工事も続行が難しい事態となり、しかも、汚染を隠蔽していたとして、行政やマスコミなども動きはじめると、業者は住民に謝罪したうえで全面和解せざるをえなくなりました。当然ながら、この和解金は、住民対策費の範囲をはるかに超過した、かなり高額のものとなりました。また、土壌入替のための出費も余儀なくされただけではなく、住民が業者を信頼していないため、その他の和解条件や、協定書も、業者にとってきわめて厳しい内容となりました。

どちらの業者が賢明だったかは、これでおわかりだと思います。

いまは、インターネットの時代です。
このホームページはもとより、たくさんのマンション紛争のホームページが存在します。
つまり、住民は素人ではありますが、以前ほど孤立はしていません。その気になれば、法律や判例を調べることも、他の紛争地域の経験を参考にしたり、弁護士を捜したりすることも、さほど難しくはないのです。

そしてまた、現在は、企業倫理が問われる時代です。あの雪印食品のように、大企業といわれる会社ですら、内部告発ひとつで、不買運動を経て、解散に追い込まれるような時代です。
ましてや、株価が低迷し、債権放棄などによって支えられている建設業界には、いま、国民から冷たい視線が投げかけられています。

そう。時代は、高度経済成長のころとは違うのです。
マンションを作ることが悪いのではありません。作るのであれば、これからは、地域の住民との共生を考える社会的責任が問われる時代だということです。

そして、それは、単に、倫理だけの問題ではありません。結果的には、貴社の営利ともかかわってくるのです。

たとえ、住民相手の裁判にも勝ったとしても、地域から完全に浮き上がり、そのマンションには出前も断られ、タクシーも来てくれず、小学校の子供まで、学校で「○○君ちのマンションって、違法建築のくせに」といじめられるので、入居者がいつかず、新規購入希望者も途絶え、ゴーストタウン状態になってしまったという笑えない話があります。

そこまでいかなくても、ことあるごとに地域住民から白眼視され、周囲には、下見客が動揺するような立て看板や垂れ幕。インターネットでも、購入を検討している人たちが、貴社名や貴社ブランドのマンション名を検索すれば、いかに貴社が悪辣で、そのマンションに問題があるかを訴えるホームページが検索に引っかかる。......そのようなマンションを無理に作ったところで、この不動産不況の折りでは、いくら有能な営業社員さんでも、売るのは大変ではありませんか。

「損して得取れ」という言葉もあります。
いまからでも遅くはありません。誠意をもって、住民と話しあってみてください。