業者に誠意がないとき

マンション業者にとって一番おそろしいことはなんでしょうか。
取得した土地に、マンションが建てられないこと。
そして、それ以上に怖いのは、莫大な資金を投入して建てたマンションが売れないことです。
それがわかっていれば、おのずから、闘いの方法は見えてきますね。

具体的には、マンション周辺に、反対の垂れ幕やポスターを貼ったり、駅前やモデルルーム付近で、チラシを配ったりすることから始まります。
近隣の外側の、周囲の町内にチラシを配るのも有効です。なぜなら、マンションは、まず地元住民をターゲットに販売されるからです。
このとき、重要なのは、ヒステリックにならないこと。名誉毀損にならないこと。
いくら誠意のない業者に腹を立てていても、ただの誹謗中傷になったらこっちの負けです。
土壌汚染疑惑などがあれば、徹底追及するべきです。

これらの反対運動の垂れ幕やポスターを見るのは、第三者です。それも、マンションを購入しようと下見に来る人に与えるインパクトを考えてやってみてください。かなりのことができます。

東京高裁では、99年11月に、日照妨害や風害について「近接住民への損害補償は、マンション購入者にも請求します」という内容の垂れ幕に、違法ではないという判決を出しています。こんな垂れ幕があるマンションを誰が買いたいと思うでしょうか。

チラシに関しては、同じく99年10月、新潟地裁で、業者側の損害賠償請求を全面的に棄却する判決を言い渡しています。このチラシは、業者と行政の癒着を告発したところ、業者から名誉毀損で訴えられたものでしたが、この判決では、「当時、汚職収賄事件が報道されていたことや、町において、(業者側による)利益誘導がらみの設置推進運動がなされたことは事実である」とし、「このような事実をもとにして、公共の利害に関することについて公益をはかる目的でなしたものであるから、重要な部分について真実であるとの証明があったときは、人身攻撃に及ぶなど、意見ないし論評の域を逸脱したものでない限り、公正な論評の範囲のもので、ビラの配布は違法性を欠き、名誉棄損の不法行為にはあたらない」旨を明言されています。
また、2000年1月には、秋田県で、建築禁止の仮処分を申請した住民に対して、業者が約5億円の損害賠償請求訴訟を提起してきたケースでも、秋田地裁・仙台高裁ともに、そのような威嚇的な請求は棄却しています。

2001年には、東京八王子でも、住民の立て看板やビラの配布にたいして業者が起こした裁判が、却下されています。「係争中」「建設反対」というような文面は、住民の主張ないし要求を記載したもので、客観的事実であるから、違法ではないという要旨です。

反対運動の立看板例

右の写真は、住友不動産シティハウス仙台榴岡と戦うチサンマンション榴ヶ岡管理組合さんが、この判決を参考に、弁護士さんの助言も加えて、設営された立看板です。お見事です。下見にきたお客さんに絶大な効果を与えているとのこと。(クリックで拡大してご覧ください)

(註:チラシの文面や、立看板の文章にも著作権は存在します。この文言(あるいは酷似した内容)を使われる場合は、常識として、チサンマンション榴ヶ岡管理組合さんに一報して、許可をもらってください。)

いずれにしても、垂れ幕やポスターは、相手側の敷地内や塀にとりつけないこと。
そして、いったんあげた垂れ幕やポスターやのぼり、ホームページなどは、完全和解が成立するまでは絶対におろさないことです。
(行政の指導に応じて、業者がいったん折れたように見せかけて、和解交渉を開始する、とか、協定書を作るという程度のことと引き替えに、垂れ幕などを降ろす約束などしてしまうと、まさに業者の思うつぼです)

のぼりやポスターは、目立つように、自分たちの敷地(塀や入り口など)に建てます。住民が結束して、マンション付近、とくに駅からマンションまでの通行路のそこここに建てることができれば、かなり有効です。

のぼりは、もちろん住民の方の手作りでもいいですし、インターネットで安くて良心的な業者さんに発注することもできます。(リンクページに、紛争のものでも請け負っていただける会社を何社かご紹介しています) 枚数やデザイン、色数にもよりますが、1枚あたり1000円を切るようなところもありますので、少しお金を出し合って同じものを揃え、近隣住民の門柱にずらりと並べるというのは、壮観かもしれません。(少なくとも、立看板同様、近隣住民の心意気がはっきり示し、下見客に一考の余地を提供し、結果として業者の一番痛いところをつくことになると思います)

また、道路法の車両制限令というマイナーな法律を使って、車両を止めるという方法もあります。
これは、一方通行でない道路の場合、路肩を除く道路幅の半分を超える車体幅の車両の通行は、道路管理者(区道なら区が管理者)の認定を受ける必要がある、という法律です。 しかも、この認定は、車一台一台について必要となります。

道路幅が4mの場合、路肩は50cmですから、通れる車両は、1m75cm。一般的な国産乗用車でギリギリ。工事車両は、法律的に、通ることができません。
いうまでもなく、業者が工事車両一台一台の認定を受けるのは、事実上不可能です。
ただし、自分達の車についてもこの法律は生きておりますので、相手をこれで攻めるときは、そのことを了承し、必要なら、区に届けを出しておきましょう。

それでも業者が強硬で、工事協定書はおろか、話し合いにすら応じない。説明会でも、一方的に業者側の主張を繰り返すだけ、といった場合。
そして、行政の方の動きも芳しくない場合。調停も、不調である場合。(こういった場合、行政は、業者に対して、なんの強制力もありません)
最後の手段として、もっとも現実的なのは、座り込みです。

しかし、これは、法律上は非常にデリケートな行為でもあります。業者に訴えられる可能性が少なからずあるからです。
ただ、悪質な工事妨害でない限り、住民が実際に賠償金を科せられるようなことはありません。

悪質な工事妨害とは、業者がかなりの設計変更などに応じ、また、話し合いを要望しているにもかかわらず、住民側が話し合いに応じようとしない。大半の住民は和解しているのに、ごく一部の住民だけが執拗な工事阻止を行っている。反対の理由が、第三者から見て、まったく説得力が感じられない。工事妨害の内容が、関係のない第三者にまで多大な迷惑を及ぼしている.....といった場合などです。
図書館の建築関係の図書をおいてあるコーナーを捜せば、建築に関する法令や判例を掲載した書籍があるので、ざっと判例などに目を通しておくといいでしょう。

大事なのは、「工事を妨害(阻止)してやるぞ」と脅迫ととれるような言葉は使わない。
ぜったいに手は出さない。暴力は振るわない。相手側の敷地内に入らない。
あくまでも話し合いを求めるという態度を崩さない。

それでも業者が訴えると、不法行為ではありますので、裁判所の排除命令が出ます。ただし、この場合は、住民の会、という不特定多数に対して、排除命令が出ることはないので、名指しされた人だけが座り込みをやめたらすむことです。参加住民が多ければ、大した実害はありません。

尚、座り込みは、無理に工事初日にやる必要はありません。むしろ、途中から止められる方が、業者には打撃になります。
一説には、一日あたり、200万円ほどの損害が出るようです。業者が悲鳴をあげるのを待ちましょう。

なお、「ビラまきで営業妨害行為をしたり、座り込みなどすると、業者が大損をする。すると、住民対策に使える予算も削られて、もらえる補償金ももらえなくなるから、やめた方がいい」と、したり顔でアドバイスする人も出てくることがあります。
一見、説得力がありますが、真に受けてはいけません。
まともな業者であるなら、はじめから、住民とはある程度の話し合いをするはずですし、住民対策費も、建築経費に算入するべきものなのです。反対運動のために、建設費や住民対策費がふくれあがって、マンションの分譲価格が上がったとしても、それは業者の問題であり、近隣住民が思いやることではないはずです。
そもそも、たかが数百万円〜数千万の損害で、補償金を払えなくなるほど経営状態の悪い業者であるなら、そのような会社の建てるマンションは、見えないところで手を抜いた欠陥マンションである恐れも高いといえます。そのようなものが建つほうが、よほど問題でしょう

道路法